医療ダイエットとは、医師の管理下で診察・検査・治療方針の決定・定期的なフォローを行いながら、体重や体脂肪を医学的に適切な範囲へ近づけていく診療のことです。
このコラムでは、医療ダイエットと市販薬・自己流ダイエットの違い、医療ダイエットで使われるGLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬の基礎知識、保険適用と自由診療の違い、副作用やリスクについて、わかりやすく解説します。
「ダイエット」という言葉は、日常的には体重を落とすための食事制限や運動、市販製品の利用など、幅広い意味で使われています。これに対して医療ダイエットは、医師が診察と検査を通じて全身の状態を確認したうえで、その方に合った方針を組み立て、経過に応じて調整しながら継続的に見ていく、という点に特徴があるとされています。
体重の増減や肥満の背景には、見た目の問題だけでなく、血圧・血糖・脂質などの数値の変化と関係することが知られています。健康診断で指摘を受けた方や、これまで自己流のダイエットで思うような変化が得られなかった方にとっては、「まず医療機関で体の状態を確認する」という選択肢が、安全に取り組むための出発点になり得るとされています。
医師の管理下で行うということは、単に薬を処方するかどうかということではありません。医学的にダイエットや薬物療法の必要性があるかを判断し、体調の変化に応じて用量や方針を調整し、副作用や体調不良が起こった場合には医療的な対応を行える、という一連の過程の中で診療が進むということを意味します。
自己判断で体重を落とそうとする場合、極端な食事制限や自己流の運動、あるいは個人輸入などによって体調を崩してしまうことも考えられます。医療機関では、こうしたリスクをできる限り抑えながら、無理のない範囲で継続できる方針を一緒に考えていくことになります。
医療ダイエットの一般的な進め方としては、以下のような流れがとられることが多いとされています。
このように、医療ダイエットは「一度薬をもらって終わり」というものではなく、医師と相談しながら継続的に取り組んでいく診療である、という位置づけになります。当院での具体的な流れは初診時の診療の流れをご覧ください。
自己流のダイエットや市販のダイエット関連製品との最も大きな違いは、医師による医学的な診察・検査に基づく個別の判断と、経過に応じたフォローが継続的に行われる点にあるとされています。
市販のダイエット関連製品やサプリメント、そして食事・運動を中心とした自己流のダイエットには、それぞれ「日常生活の中で気軽に取り組める」という良さがあります。医療ダイエットはこれらを否定するものではなく、「セルフケアで整えられる範囲」と「医療機関で扱う範囲」の役割の違いを理解して使い分けることが大切だと考えられています。
特に、健康診断で気になる項目を指摘されている方、既往歴のある方、服薬中のお薬がある方などは、体調や薬の相互作用に配慮した判断が必要になる場合があります。以下の表は、それぞれの位置づけをいくつかの観点から整理したものです。
観点 | 医療ダイエット | 市販のダイエット関連製品・サプリメント | 自己流ダイエット |
|---|---|---|---|
医学的な診察・検査 | 医師による問診・診察・必要に応じた検査を行います。 | 診察・検査は伴いません。 | 診察・検査は伴いません。 |
使用する薬・製品の位置づけ | 医薬品(医師の処方が必要なものを含む)が用いられる場合があります。 | 食品・サプリメントとして販売されているものが中心です。 | なし(食事・運動の工夫など)。 |
副作用・体調変化への対応 | 体調変化や副作用が出た場合、医師に相談でき、必要な対応を行います。 | 製品の購入元等への相談は可能ですが、医学的な診察・対応は自己判断となります。 | 体調変化があった場合は、自己判断での見直し・受診が必要となります。 |
効果・適応の考え方 | 個々の状態に合わせて適応を検討し、経過を見ながら方針を調整していきます。 | 製品ごとに用途・目安量が定められていますが、医学的な個別調整は行われません。 | 自己の判断で進めるため、効果やリスクへの配慮も自己責任となります。 |
費用の考え方 | 保険適用の要件を満たす場合を除き、自由診療(自費)となります。当院では自費診療として扱います。 | 製品の購入費用が発生します。 | 基本的に費用はかからない一方、食材・器具などの費用が発生する場合があります。 |
市販の製品や自己流の取り組みで一定の手応えを感じている方も少なくありません。一方で、体調に不安がある方、健康診断で指摘を受けた方、これまでのダイエットで体調を崩した経験がある方などは、まず医療機関に相談して現在の体の状態を確認する意義があると考えられています。
GLP-1受容体作動薬とは、小腸から分泌されるGLP-1というホルモンと同じはたらきをすることで、脳や胃腸、インスリン分泌などに作用する薬の総称とされています。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をとったときに小腸から分泌されるホルモンで、脳や胃腸にはたらきかけ、インスリン分泌やグルカゴン分泌に関わることが知られています。この「GLP-1と同じはたらき」を薬として利用したものがGLP-1受容体作動薬であり、脳や胃腸にはたらきかけて食欲を抑える効果があるとされています。
また、小腸から分泌されるホルモンには、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)と呼ばれるものもあります。近年では、GLP-1と同様のはたらきに加えて、GIPと同様の効果もあわせ持つ「GIP/GLP-1受容体作動薬」と呼ばれる薬も登場しています。
GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬は、脳や胃腸にはたらきかけて食欲を抑える効果があり、肥満症の方に使用することで体脂肪を減らして体重を落とす効果が期待できるとされています。アメリカ・ヨーロッパ・アジアの各国でも肥満症の治療薬として承認されていますが、国や地域によって承認状況は異なります。
ここでは、当院で取り扱っている5つの製剤について、日本での承認内容とあわせて整理します。同じ有効成分でも、承認されている使用目的(適応)が製剤ごとに異なる点にご留意ください。
製剤名 | 一般名 | 剤形 | 日本での承認内容 | 肥満症治療目的での承認 | 当院での扱い |
|---|---|---|---|---|---|
ゼップバウンド | チルゼパチド | 注射薬 | 肥満症の治療を目的として承認(2024年12月) | ◯ 肥満症適応あり | 自費診療 |
マンジャロ | チルゼパチド | 注射薬 | 2型糖尿病の治療薬として承認 | × 肥満症適応なし | 自費診療 |
ウゴービ | セマグルチド | 注射薬 | 肥満症の治療を目的として承認(2023年) | ◯ 肥満症適応あり | 自費診療 |
オゼンピック | セマグルチド | 注射薬 | 2型糖尿病の治療薬として承認 | × 肥満症適応なし | 自費診療 |
リベルサス | セマグルチド | 内服薬(飲み薬) | 2型糖尿病の治療薬として承認 | × 肥満症適応なし | 自費診療 |
ゼップバウンドは、GIP/GLP-1受容体作動薬と呼ばれる注射薬で、GLP-1と同様のはたらきに加え、GIPというホルモンと同様の効果もあわせ持つとされています。同じチルゼパチドを有効成分とするマンジャロは、日本では2型糖尿病の治療薬として承認されており、肥満症の治療薬としては承認されていません。
また、セマグルチドを有効成分とするウゴービは肥満症の治療を目的として承認されている一方、同じセマグルチドのオゼンピック(注射薬)・リベルサス(内服薬)は、日本では2型糖尿病の治療薬として承認されており、肥満症の治療薬としては承認されていません。
※上記で「肥満症適応なし」とされている製剤をダイエット目的で使用する場合は、日本での承認範囲外(いわゆる適応外使用)にあたるとされています。当院ではいずれの製剤も自費診療として扱っています。
これらの薬は、国が定めた要件を満たす場合に限り保険適用となり、それ以外の使用は自由診療(自費診療)として扱われるとされています。
肥満症の治療を目的として承認されているGLP-1関連薬(ゼップバウンド、ウゴービ)については、国が定めた要件を満たす場合に限り保険適用となる仕組みが整えられています。要件を満たさない場合や、日本国内で肥満症の適応が承認されていない製剤をダイエット目的で使用する場合は、自由診療(自費診療)として扱われることになります。
保険適用の主な要件は、以下のとおりとされています。
ここに挙げたのは要件の主な部分であり、実際の適用可否は診察・検査を経て医師が総合的に判断することになります。
当院(ウェルネスクリニック東京ステーション)では、上記のGLP-1関連薬による医療ダイエットはすべて自費診療として扱っています。費用は診療内容や処方内容によって異なりますので、目安は医薬品・料金一覧をご覧いただき、詳しくは受診時にご確認ください。
「自分は保険適用の対象になるのか」「自費で受けるべきか」といった判断は、体の状態やこれまでの取り組みを踏まえたうえで検討する必要があります。ご不明な点がある場合は、まず一度ご相談いただくことをおすすめしています。
GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬には、吐き気・食欲低下・便通の変化などの胃腸症状をはじめとする副作用が起こる場合があるとされており、医師の管理下で慎重に使用することが重要とされています。
GLP-1関連薬に共通してみられやすい副作用としては、吐き気・嘔吐・下痢・便秘・食欲低下といった胃腸に関わる症状が挙げられます。これらの症状は、開始初期や増量のタイミングであらわれやすいとされ、多くの場合は経過とともに落ち着いていくと考えられていますが、程度や続きやすさには個人差があります。
症状が強い場合や長く続く場合には、用量を調整したり、いったん中止したりするなどの判断が必要になることがあります。こうした判断は自己流で行うのではなく、医師が体調を確認したうえで行うべきものとされています。
近年、GLP-1関連薬をインターネット等を通じて個人輸入し、自己判断で使用するケースが問題となっています。個人輸入で入手した製品は、品質や保管状態が担保されているとは限らず、正規のルートで流通しているものと同一とは限らないとされています。
また、副作用や体調不良が生じた場合に、その製品を入手した経路では医療的な対応を受けにくいことに加え、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があるとされています。健康被害が生じた際に必要なサポートが受けにくくなる可能性がある、という点は特に重要です。
これらの薬は、医師が体の状態を確認したうえで適切に使用することが前提とされています。効果を期待する気持ちがあっても、自己判断ではなく、必ず医療機関で相談することが安全性の確保につながると考えられています。
体重や体型の悩みに加えて健康上のリスク要因を抱えている方は、自己流で対処する前に、医療機関への相談をご検討いただくことをおすすめしています。
次のような項目に当てはまる方は、一度医療機関で現在の体の状態を確認したうえで、無理のない方針を一緒に考えていくことが望ましいと考えられています。
「まだ相談するほどではないかもしれない」と感じる段階でも、体の状態を早めに確認しておくことは、将来の健康リスクを見通すうえで意味があるとされています。ご自身の状況に合った選択肢を整理するためにも、気になる点があるうちにご相談いただくことをおすすめしています。当院の診療内容は当院の肥満外来でご紹介しています。
医療ダイエットは、まず医師が診察と検査を行い、医学的な必要性や安全性を確認したうえで方針を決めていく診療とされています。年齢・既往歴・服薬状況などによって選択できる方針は異なりますので、対応の可否や内容は診察の中で判断されることになります。
肥満症の治療を目的として承認されているGLP-1関連薬は、国が定めた要件(BMI 35以上、またはBMI 27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上お持ちで、6か月以上食事・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合など)を満たす場合に限り保険適用となるとされています。当院ではこれらのGLP-1関連薬による医療ダイエットは、すべて自費診療として扱っています。
市販のダイエット関連製品やサプリメントは、食品として販売されているものが中心であり、医師の診察・検査は伴いません。医療ダイエットでは、医師が体の状態を確認し、必要に応じて医薬品を用いながら経過に応じてフォローを行うという点が異なるとされています。
効果の現れ方には個人差があるとされており、体重の変化は生活習慣とあわせて経過を見ていくものと考えられています。短期間での急激な変化を目指すのではなく、無理のない範囲で継続することが大切とされています。
薬物療法の中止後の体重の推移は個人差が大きく、生活習慣の維持によっても変わってくると考えられています。薬に頼りきりにするのではなく、食事・運動などの土台となる生活習慣を並行して整えていくことが重要とされています。
GLP-1関連薬では、吐き気・食欲低下・便通の変化などの胃腸症状が起こる場合があるとされています。症状の程度や続きやすさには個人差があり、必要に応じて用量調整や中止などの判断を医師が行いますので、気になる症状があれば早めにご相談ください。
個人輸入によって入手した製品は、品質・保管状態が担保されているとは限らず、副作用が生じた際の医療的な対応や、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があるとされています。医療機関を受診してGLP-1関連薬を使用する場合は、医師が体の状態を確認したうえで処方を行い、経過に応じてフォローを行える点が大きな違いです。
そのほかのご質問はよくある質問にもまとめています。
発行・監修:ウェルネスクリニック東京ステーション
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